2021年4月25日、5月17日、6月6日の3日間で開催された、「5Gエクスペリエンス・アイデアソン・ハッカソン」にunerry CTOの伊藤さやかと技術部kurayaが参加しました。
2人が作ったのは、「レストランみえ〜る 5G」というアプリ。審査員の方からは、「国がやるべき施策」と、非常に大きな期待が込められたコメントをいただいたきました。
本記事は、過酷な戦いとなったハッカソンの記憶を記すことで、unerry技術部の「熱量」を社内外に伝染させていきたいと思います。
特定非営利活動法人 日本Androidの会主催、KDDIテクノロジー社運営の、「5G」と「Androidスマートフォン」を用いた、アイデアソンとハッカソンイベント。
Android11から対応の、「5Gエクスペリエンス」を提供するAPIを活用したアイデアを出し合い、そして開発を行いました。
※「5Gエクスペリエンス」はKDDI社が提案する、5G通信方式を用いて得られるユーザ体験(エクスペリエンス)です。
「Pixel 5」の賞品につられて参加
うねりの泉編集部(以下、う編集部):
まずは、「5Gエクスペリエンス・アイデアソン・ハッカソン」に参加されたきっかけを教えてください。
伊藤さやか(以下、さやか):
「日本Androidの会」という、Androidが日本上陸した時からある老舗のユーザー&開発者コミュニティがあるんです。いろんな凄腕エンジニアがお忍びで参加されているのですが、みんな仲良く正体を隠しながらコミュニティ活動をしているんですよね。
で、そこのメルマガを登録していて、今回のハッカソンを知ったわけですが、賞品が豪華だったんですよ。なんとアイデアソンで勝ち残った全員に「Pixel 5」がプレゼントという大盤振る舞い。
ちなみに、ハッカソンってご存知ですかね?
決められた時間内、同じ条件で、できれば同じ場所にみんなが集まって、ソフトウェアやハードウェアを作ります。同じように苦労して、みんなで成果を発表し合うという、極めて平和な技術イベントなのですよ。
パンデミック以前は夏になるとよくオフラインで開催されていましたが、今は全然なくなってしまいましたね。今回はオンライン開催で、私も参加するのは1年ぶりでした。
kuraya:
自分も、伊藤さんと同じく賞品につられていきました。アイデアを出すときも実際に作るときも、すごく楽しかったです。ハッカソンは初参加だったのですが、普段の業務で触らない技術も使えるいい機会だったので、ワクワクしました。これを機に、unerryオリジナルのアプリも作ってみたいですね。
5G × AR × 位置情報を活用したアプリを開発
う編集部:
改めて今回の「レストランみえ〜る 5G」についての紹介をお願いします!
さやか:
この画像にあるのは、うちの前の道路なのですが、空中にARの黒い看板が出てきていると思います。
この方向に「いつでも!ステーキ」とか「焼肉王者」といったお店があると見立てて、空中にお店の紹介動画を浮かべています。スマホを左右にふって、方向が合ったときだけ出てくるんですよ。タップすると、WEB画面に遷移し、ここではkurayaさんのスマホカメラで映しているものをライブで表示しています。
アプリの向こう側にカメラがあって、そのカメラの動画を常時見ることができる仕様です。美味しそうな映像だけでなく、厨房の中で豪快なフランベをしている様子とか、客席をアルコール消毒をしている様子とか、店が伝えたいものをダイレクトでユーザーが受け取ることができるようになります。
う編集部:
これをやろうというアイデアはどう生まれたのですか?
kuraya:
5Gの、大容量・低遅延の特性は動画で活きるなあと思っていました。じゃあ、どんな動画を撮ったらいいかってことなんですが、お肉を焼いてる動画とかなら、レストランの宣伝にもなっていいなって。
さやか:
アイデアソンが実施されたのがちょうど昼時だったのですよ。食べ物のことしか頭になかったとしても過言ではないと。最終的に焼肉にするか、ラーメンにするか、kurayaさんと激論を交わしました 笑。
う編集部:
実際の開発はどのように進められたのですか?どんなところが大変でした?
さやか:
当初は、用意された会場での開催予定だったのですが、コロナの影響で難しくなってしまって。土日を使ってやることになりました。平日もなんだかんだでちょこちょこと。
「レストランみえ〜る 5G」の構成と役割分担
役割分担については、kurayaさんがネイティブプラグインの開発などライブ動画配信まわり(サーバーサイド側)を、私がアプリ側を担当しました。前職で触っていたUnityですが、久しぶりに本格的に使うことになって、バージョンも上がっているし、だいぶ勉強しましたね。
kuraya:
自分は、配信サーバー自体を作るのが初めてでしたので、調査に時間がかかってしまいました。最終的にはSkyWayというWebRTCのサービスがあって、それを経由する形に落ち着きました。あと、Unityの場合は、AndroidのAPIを呼び出すときにプラグインを使うのですが、その連携がなかなかうまくいかずに苦戦しました…。
さやか:
家の近くにミリ波の5Gがちょこっとだけ入る場所がありまして。電車の高架下なんですが、雨風はしのげるとはいえさすがに野外でプログラミングはできないので、「作ったプラグイン動くかな〜」って家から試しに行くんですよ。で、動かなかったら帰ってソース直してビルドし直してまた行ってって感じで往復30分かかるんですけど….しんどかったです!! 笑。
う編集部:
お2人とも、結構なお時間や労力をかけて進めていったのですね。
壮大すぎたテーマに挑んだハッカソン
さやか:
アイデアソン通過した後に気づいたのですが、我らのチームは他と比べても明らかに仕様盛りすぎました。
でも、偉そうなことをいうと、今回せっかくオンライン化したハッカソンだったので会場には集まれない分、でっかいことしてやろうと思って。終わんなかったとしても、爪痕残したかったんですよね。まあ結局終わらなくて、賞も逃してしまったのですが。残念っ 笑。
う編集部:
審査員の方のコメントを聞くと、「国がやるべき施策」「底力のあるテーマ」と、かなり高い評価をいただいていましたよね。
さやか:
5Gの「中の人」が考える、「こうやって使って欲しい」という方向に、多分近かったのかなと思います。
このアプリの特徴を一言でいうと、「人気店だけでなく、誰もがコマーシャル動画を常時配信できるようになった上で、見る人が自由に選ぶことができる」ということ。
審査員の方のお話にもありましたが、ネット上であらゆるお店の様子が中継され続けるという世界観は、これまで何度も考えられてきた普遍的なものです。今までは、技術的な制限で、なかなか実現できなかったのですが、5Gがキラーになる可能性があるわけですね。
ちなみに、社内でも共有したところ、とある案件で実証実験のお話もいただいたりと、有り難いかぎり。バッテリー消費が激しすぎるなど、技術的にはまだまだ改善の余地があるんですけど 笑。
う編集部:
他チームは、どんな様子でした?
さやか:
アイデアソンに参加したのは定員いっぱいの80人。その中の半分が勝ち残って、40人でハッカソンが行われたのですが、学生さんや、企業で研究員されている方、会社員をしながら新しいことをやりたいという方が沢山いました。
いろんなアイデアが出ていました。例えば5Gに接続できた時に、5人のお爺さん(5G)のイラストが踊りだすアプリとか 笑。遠く離れた人と音楽を一緒にセッションできるアプリとかもありましたね。プロトコルから作るという、かなり本格的なことをされていました。いわゆる「プロの犯行」ですね。笑。
う編集部:
最先端の技術ですね。
予定調和がないのは、ハッカソンの真髄
さやか:
日本で5Gが本格的に普及するのは2023年と言われています。まだちょっと先ですね。その5Gが実際に使える状態で、ここまで大々的にハッカソンが行われたのは初だったと思います。テクノロジー大好きな人たちが集まって、ビジネス考慮せずに好きなものを好きなように作れる。予定調和がないのは、まさにハッカソンの真髄です。
う編集部:
今って、日常で調べたいものは、ネット検索すれば、だいたい答えは出てくるじゃないですか。でもお2人やハッカソンに参加されている方々がやりたいことって、どこにも先例がないですよね。先陣をきっているといいますか。
さやか:
そうですね。今回ハッカソンに参加した40人は、「5Gエクスペリエンス」の仕様について日本で1番詳しい集団なんじゃないかな。参加者みんな、試行錯誤しながらそれぞれの答えを見つけていたと思います。私も、まさかこんなに苦労するとは思ってなかったのですが…図らずとも非常に詳しくなってしまいました 笑。
う編集部:
アプリは、未完だということですが、今後完成の予定はありますか?
さやか:
もちろんですよ。まだ私たちの戦いは始まったばかり。ですよね!kurayaさん!?
kuraya:
年内には。
さやか:
え!?年内!!??本当!!???
ゲームがきっかけでエンジニアになった2人
う編集部:
完成版「レストランみえ〜る 5G」、楽しみです!それにしても、普段の仕事とは別に壮大なプロジェクトにチャレンジしているわけですが、そういう開発の楽しさを知ったのは何がきっかけだったのですか?
kuraya:
自分は子どもの頃から物作るのがめっちゃ好きで、夏休みに工作とかしていたのですが、ふとゲーム作ってみたいなと思ったんですよ。20年くらい前、初めて作ったプログラムが動いたのが嬉しくって、プログラマーになりました。
さやか:
私も子供の頃がきっかけです。
親が弟にPC-9801を与えたんですよ。弟だけに!で、弟の目を盗んではベーシックのパックマンをやっていたのが最初ですね。ちなみに弟もプログラマーになって、今はゲームを作っています。
う編集部:
ゲームはきっかけになりがちなんですね。
さやか:
ゲームから入るエンジニアさんは多いと思いますよ。遊ぶのも作るのも好き、という人は多いです。でも、ゲームファンだからといって、必ずしもゲームを作っているわけではなくて。
私も1997年頃に、とあるゲームのファンコミュニティに属していたのですが、そこでWebサイトを作って、Pearlのプログラムで掲示板を作ったんですよ。その掲示板に仕込んだ人工無能が面白いって褒めてもらえて、「あれ、もしやこれで食べて行けるかも!」って思って、Webの会社に就職しました。
オープンソフトが世界を更新してきた
う編集部:
ところで、今回のハッカソン含め、エンジニアさんの世界では、知識がかなりオープンですよね。それってどうしてなのでしょうか?
さやか:
我々の世代って、インターネットが普及して、Linuxなどのオープンソフトが世の中を大きく変えてきたのを目の当たりにして育ってきたんですよ。
かつては利益優先で、オープンにできなかった世界に対してのカウンターカルチャーとして、どこの国のどこの政府のものではないものを、新たなライセンスを定めて、こういう条件なら使えるというのをきっちり定めたのが大きかったと思います。
そうやって先輩たちが無償で、コミュニティで寄ってたかって開発してきた姿を見ていると、自然と「自分も!」っていう文化になるんじゃないかな。
う編集部:
エンジニアさんのコミュニティが世界を更新してきた、というのは、1人の生活者目線でも感じます。
世の中に「うねり」を起こしていくことは、unerryのミッションですので、エンジニアさんの素敵なカルチャーをお手本にできればなと思います!!「5Gエクスペリエンス・アイディアソン・ハッカソン」への参加、お疲れ様でした。今後も壮大なチャレンジに注目させていただきます!
当日の様子はYouTubeでも公開されていますので、是非ご覧ください。
※伊藤さやか&kurayaチームの登場は、2:57:57頃〜
なお、こんなチャレンジングな2人と働きたい方は、是非こちらよりご応募ください。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
※本記事は、6月30日にunerry内で行われた公開インタビューを再編集したものです。
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