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2021.09.14

うねりの泉編集部

「西日本新聞me」アプリの開発裏側! 「本丸」を行くDX(前編)

「西日本新聞me」アプリの開発裏側! 「本丸」を行くDX(前編)

西日本新聞様は、今年4月、ニュースアプリ「西日本新聞me」をリリースしました。「西日本新聞me」では、福岡を中心としたニュース・生活情報はもちろん、街中に設置されたライブカメラの映像配信やオリジナルのマップ機能など、福岡の地域密着情報がギュッと詰まったコンテンツを提供しています。

unerryはアプリのコンセプト開発から関わり、特に位置情報と地域情報とを掛け合わせることで、「地方紙の特性を圧倒的に活かす」べくご支援をしてきました。

ローンチから約2ヶ月。今だから聞ける開発の舞台裏について、実際に、二人三脚でプロジェクトを進めてきたunerry代表内山が聞きました。

ご協力いただいたのは、西日本新聞社経営企画局の井関隆行様です。

※取材は、2021年6月1日に行われました。

デジタル変革においても一丁目一番地のど真ん中をおさえる

unerry内山:改めて、なぜ西日本新聞様が、アプリ事業を立ち上げることになったのか、教えてください。

井関様:一言でいうと、デジタル時代にも変わらないミッションを果たすため、必然的にそうなったと考えています。

西日本新聞のミッションは、経営理念でも明文化されているように「地域づくりの先頭に立つ」ということにあります。

今は、新聞紙だけでは、その使命を果たしきれない時代になってきたので、スマホアプリの形も取り入れた、という自然な流れかと思っています。デジタルを使えば、地域づくりのための様々なやり方、新しいオプションを持てると思うんです。

「西日本新聞me」サイト

unerry内山:実際、西日本新聞様が「アプリ事業をやろう」となった際、たとえば地域クーポンやサブスクでのサービス提供など別の選択肢もあったのではないでしょうか。その中でも、「ニュースアプリ」を選んだのはどういう基準だったのでしょう?

井関様:今回のアプリ開発をお願いする前のタイミングで、社内で新規事業立ち上げのワークショップを行いました。

いくつもアイディアが出て、確かに、新聞社のリソースを使えば、多角的なこともやろうと思えばできるのですが、やはり一丁目一番地のど真ん中の報道をまず最初に固めるべきだということになり、「ニュースアプリ」というドメインをやることになりました。

unerry内山:新聞社さんですからね。

井関様:一丁目一番地を抑えてないのに、周辺をやっても浮世離れというか、地に足がつかない感じになってしまいますし。

地域や市場だけでなく、社内の変革といった意味でも、本丸をやる必要がありました。社員の半分以上をしめる記者のみなさんが、デジタルに取り組める受け皿をつくれれば、会社自体のデジタル変革が一気に進むはず。そういった意味でも、まずはニュース、報道の部分だと思いました。

問い続けてきた、デジタルとの掛け算が、新聞社のアップデートにつながる

unerry内山:西日本新聞様そのもののデジタル化、つまり新しいフォーマットの新聞社への変革なのかなと思いました。

でも、井関さんの立場的にいうと、アプリ事業担当じゃないですか。しかし会社全体を見た上で、これが大事だってわかって動いているように私には見えていて、すごいけれど、みんなができることじゃないと思うんですよ。なんで、できたのかに興味があります。

井関様:新聞記者じゃなかったからでしょうね、良くも悪くも。

僕は転職で入社して10年になりますが、それまではNHKで6年、ネットベンチャーに4年いました。新聞社員の花形はやはり新聞記者であり、よい記事を書くための、記者の道を極める王道があります。一方で、僕は会社のデジタル事業を任される、という入り方をしました。

なので、西日本新聞社員の大多数が追いかけている「何を取材して、どう書こうか」という問いとは、別の問いが頭の中にずっと立っていました。

それは、「地域づくりを、デジタルを掛け算して、もっと上手くやるにはどうしたらいいんだろう?」という問いであり、入社以来長く考え続けてきた問いです。

10年前は、デジタル変革は会社の主たる問いではなかったけれど、ここ数年で急速に会社のデジタルシフトが進み、同じ問いに会社全体で取り組むタイミングが来たということかと思います。

デジタル化の「先」を目指すために必要なパートナー

unerry内山:アプリを内製化しようという話はあったのですか?

井関様:「願わくば内製化したほうがいい」というのは自分たちでもわかっているし、外でも言われていることではあるんですけど、正直、まだできない状況だったんですよね。

これはもう本当に、各地方新聞社だけじゃなくて、地方の企業がぶちあたる壁だと思うのですが…デジタル事業をスピーディーに立ち上げ、素早くUXを改善していくためには、自社にエンジニアを抱えて、できるだけ内製化していくことが理想。しかし現実問題すぐにはできない。

ゼロからアプリを内製化して作れるほどは時間的猶予もない状況で、とにかくまずは、自分たちがアプリとは何たるかを学ぶためにも、レベルの高い会社さんと組ませていただく方を選んだという感じですね。

西日本新聞社 井関隆行様(左)と、unerry代表内山

unerry内山:ありがたい事に、unerryはその組み先としてお声がけいただいたわけですが、端的にいうとご評価いただいたポイントはどういったところだったのでしょうか?

井関様:unerryさんが社会に対して、自分たちのプロダクトをリリースして、そこに向き合い続けている事業会社である、ということは大きかったです。

なぜかというと、単純に新聞のデジタル化でもなく、「新聞よりももっとうまく、コンテンツをデリバリーする」でもなくて、さらにその先の「新聞よりももっとうまく、地域づくりに寄与するプロダクトを作る」ことを目指すなら、言われた通りにだけやるパートナーではなく、同じように社会にプロダクトを提供して、最先端のバリューを出そうとしている会社と組むべきだと考えました。

もう1つは、スタートアップであるということ。西日本新聞が会社として変革するために、フラッグシップの事業をやろうとしたときはスピード感あるやり方をしなければならない。そのための血を分けてもらいたいと思いました。

そして、ニュースアプリの勘所を抑えていることも大きかったです。メディア事業に長く関わったご経験から、既にニュースアプリのお作法を内山さんがインストールされていたので、「そこはよしなに」とお願いしたら、99点が担保されているのは、ものすごい安心感でした。

位置情報は、地域に根ざした会社であるための「差」になる

unerry内山:自社事業ということでいうと、unerryの本丸である位置情報を、今回のアプリでも活用いただきました。位置情報は「西日本新聞me」においてどういった位置づけであるとお考えでしょうか?

井関様:地域に根ざした会社か、そうでないかの差を明確にするための、大きな「差づくり」の要素になると確信しています。

西日本新聞の何が、全国紙と違うのか?と言われたときに、記事や記者の人数といった「量の戦い」では勝ち目はないのですが、そうじゃなくて、記事1本1本の視点、質や深さといったコンテンツの違いに加えて、それをどんなUXで届けられるのか、というデリバリーのところで位置情報と掛け算した体験を作れれば、「それで、何がちがうん?」と問われたときに、明確な違いを示せると思うんです。

unerry内山:全国紙や全国ネットのテレビは、日本のみんなが知りたい情報。でも隣の町や自分が住む街で起きている地域の情報も知りたい。そういうところに、しっかりと応えるメディアを作っていくということでしょうか。

井関様:本音では、メディアという業態も、超えていかないといけないと思っていて。アプリを通じた体験に対して、「めっちゃ近いんだわ、これ」っていう一言をもらいたいんです。

ここでの「近さ」は、一般的なパーソナライズの技術とは違うんです。ものすごく研ぎ澄まされたパーソナライズのアルゴリズムで「私にぴったり!」とか、逆にそれを通り過ぎて「ぴったりすぎて気持ち悪いんだよね」とか、そういうベクトルとは違う。

そうじゃなくて、「同じ街に生きている者同士の近さ、親近感、温かみ」を感じてほしい。そして、かゆいところに手が届くような情報やその届け方で「西日本新聞やるね!さすが!」と思ってもらうため、位置情報は大事なファクターになると考えています。

[取材日] 2021年6月1日 ※内容は取材当時のものです。

※撮影時のみ、マスクをはずしています。インタビューは感染対策に十分配慮したうえで行われました。

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