+ unerry
2023.06.07
うねりの泉編集部
「テレビちゃん。」に誘われて(前編)〜愛媛朝日テレビが仕掛ける「世界最強の販促企画」が日本列島をまるっとイベント会場に〜
本シリーズは、unerryのビジネスプロデューサー イチエダと、野心的で超面白い取り組みを進める方々との対談を通してメディアとリテールの未来を考える企画です。
unerryのビジネスプロデューサー イチエダより:
愛媛県のローカル局、愛媛朝日テレビ(eat)が手掛ける「テレビちゃん。」は「世界最強の販促企画」と言っても、過言ではありません。
「テレビちゃん。」は独自アプリの活用でクイズ番組を視聴者参加型イベントへと進化させました。また、地元のドラッグストア、レデイ薬局と協業することで日常のお買物までを視聴体験の一部に取り込み、熱量高い視聴者を店頭へ送客しています。
臨場感が好評のクイズ番組は高い視聴率を獲得。さらに圧倒的なマーケティング成果を示し、「テレビちゃん。」は広告主であるメーカー企業からも熱視線を注がれているのです。
今回は10年ぶりに愛媛を訪れ、「テレビちゃん。」が目指す世界観や全国放送局を巻き込むための作戦についてリアルでお話を聞くことができました。また後編ではレデイ薬局さん、花王さんも含めての4者対談をレポートをお届けします。ぜひ併せてお読みください。
登場人物
株式会社愛媛朝日テレビ 営業局 事業創造部長 兼 経営戦略室 玉井謙二様
簡単な経歴:いろいろあってeatで3局目。技術、報道、営業などを経験。結果、一番適しているのは事業開発。放送をイベント化するテレビちゃん。はテレビマンとして集大成かも!?
「テレビちゃん。」での役割:言い出しっぺ&大方針考える人
愛媛のおすすめポイント:地元である水の都・西条。なんと水道代がタダのエリアも多い!
株式会社愛媛朝日テレビ 営業局 コンテンツデザイン局 課長 兼 事業創造部 檜垣佳宏様
簡単な経歴:2020年より「テレビちゃん。」担当に
「テレビちゃん。」での役割:「テレビちゃん。」の体験を愛媛県内そして全国に広げる
愛媛のおすすめポイント:いい人が多い
株式会社愛媛朝日テレビ 技術局 課長 兼 営業局 事業創造部 黒河純様
簡単な経歴:2011年入社。技術で色々開発していたらいつの間にかテレビちゃん。システム開発係になってました。テレビちゃん。キャッチはeatNo1コンテンツです。SNSは最近お休み中です。
「テレビちゃん。」での役割:アプリ・システム開発・SNSなど
愛媛のおすすめポイント:のほほんとしてていい感じです。
株式会社unerry Beacon Bank事業部 ビジネスプロデューサー イチエダ(一枝悟史)
簡単な経歴:株式会社電通でテレビを中心にマスメディアのプランニングを経験。在職中、株式会社プレゼントキャスト(現:TVer)に出向しプロダクト開発やアライアンスなどを推進。2020年10月、unerryへジョイン。
「テレビちゃん。」での役割:8割程度個人的なワクワク感からアドバイザーとして参画
好きな食べ物:明太子パスタ
INDEX
「テレビちゃん。」とは
「テレビちゃん。」は愛媛朝日テレビがプロデュースする、テレビ番組と連動した販促プラットフォームであり、スマホアプリの名称です。
毎週金曜、18時55分から愛媛エリアで放送される3分半の生放送クイズ番組「レデイゴー!テレビちゃん。早押しライブQ」には、回答コントローラーの機能を持つスマホアプリ「テレビちゃん。」を握りしめた2,000人超の視聴者がリアルタイムで同時参加しています。
動物クイズなど、家族で楽しめる内容の早押しクイズが出題されますが時には難問も。正解数と回答スピードを競って、ランキングが番組内ですぐさま発表される「超連動感」がクセになります。また視聴者は番組内の早押しクイズに参加すると、愛媛県内に広く展開しているレデイ薬局で使えるポイントやクーポンを獲得できます。
番組やアプリのミニゲームを通じて、商品訴求もばっちり。クーポンの平均利用率は10%超という脅威の数字を叩き出しています。
またレデイ薬局アプリとID連携することで、購入経験や性年代など、どんな属性の視聴者がクーポンを使って購入したかも分かるため、マーケティング効果も検証可能です。メーカー企業からは「棚を確保できるのが嬉しい」「キャンペーン前から売上が2倍になった」など大好評とのこと。
※以降、本記事での「テレビちゃん。」は、テレビ番組、アプリ、販促プラットフォームを含む企画全体を指して記載します。
「テレビちゃん。」は世界最強の販促企画になるはずだ。
(unerry)イチエダ:
「テレビちゃん。」を初めて知ったのは、前職の広告代理店でテレビ局担当をしていた時です。
ローカル局とリテール企業の連携といえば、当時もテレビCMが定番でした。でも、視聴者の生活スタイルや価値観が大きく変わる中で、“ルーティン”をこのまま続けるだけでいいのか、本当はもっとワクワクするような視聴体験やビジネスモデルを生み出せるのではないかと、いち担当者としてモヤモヤしていました。
そんな時に知った「テレビちゃん。」は、定番の枠を超えて視聴者との接点づくりに本質的に向き合っている企画。ビビっときました。そして、地元リテール企業とローカル局がタッグを組んで面白いものを提供できるとしたら、これは「世界最強の販促企画」になるはずだって確信して、気づいたら檜垣さんに電話していました。
(eat)檜垣さん:
ありがとうございます。僕もその電話をよく覚えています。とても嬉しかった。
「放送をイベントに」愛媛のローカル局が 日本列島をイベント会場に変える
(unerry)イチエダ:
「テレビちゃん。」が目指す世界観ってどういったところにあるのでしょうか?
(eat)玉井さん:
「テレビちゃん。」は「放送がイベントになる!」というコンセプトを掲げています。現在ありがたいことに、愛媛県中で多くの方が早押しクイズに参加してくださっているのですが、この様子を空から見たと想像すると、まるで愛媛県全体がクイズ大会のイベント会場になったみたいだと思いませんか?
「テレビちゃん。」ではこのイベント化を全国に拡大し、日本列島をスタジアムにできたらいいなと考えています。
(eat)檜垣さん:
「テレビちゃん。」では、テレビをきっかけに「心も体も動く体験」を視聴者に提供したいと考えています。どうすれば視聴者を熱狂させ、行動してもらえるのか、前身の番組含めて試行錯誤を繰り返してきました。
(unerry)イチエダ:
インターネット配信で、いつでもテレビ動画を見られるようになった今でもリアルタイムの共有はテレビの価値ですよね。ワールドカップとかWBCとか、日本中が同時にテレビを見て熱狂して、その日の話題もちきりになるような機会は年に何回かあって体感値があります。僕らが子供の頃は日常がそんな感じでしたが、「テレビちゃん。」はその価値の再定義しているのかなと思います。
(eat)玉井さん:
そうですね。その瞬間にしかない高揚感を共有していただけるのは、地上波の強みだと思います。
加えるとしたら、「テレビちゃん。」には、いわば「祭りの楽しみ方」の提案があると思います。テレビって基本的には楽しみ方は視聴者の自由で、それがどういう形であれ大正解です。でも、「テレビちゃん。」は、そこに一石投じようとしている。番組で早押しクイズに参加して、ちょっと苦労して手に入れたクーポンを持ってレデイ薬局さんに買い物に行くまでを番組の延長線上に設計しています。
企画当初から頭にあった、放送局の強みを活かした「極限までテレビ放送と連動した企画」を作りたいという考えを「テレビちゃん。」では体現できていると思います。
“超連動” の鍵を握るのは、1秒単位のアプリとテレビのシンクロ率
(unerry)イチエダ:
「テレビちゃん。」は本当に番組を視るというより、祭りに参加している感覚です。
(eat)玉井さん:
テレビ放送との“超連動”を実現するためには臨場感が必要不可欠です。早押しクイズの回答コントローラーとなっている「テレビちゃん。」アプリの開発には黒河を中心に相当こだわりました。
(unerry)イチエダ:
お一人でアプリ開発までされているのは、何度聞いても本当に驚きです。一番のこだわりポイントはどこにありますか?
(eat)黒河さん:
早押しクイズなので、テレビとアプリの画面がぴったりシンクロしていないとストレスが生じてしまいます。地上デジタル放送は仕様上、2秒程度のディレイがあるため、その遅延を考慮して両画面をコントロールできるかがポイントです。タイムテーブル通りに切り替えるだけではダメなのです。
細かな改良はいつも実施しています。小回りのきく開発体制とアジャイル開発方式の良いところです。リテールやメーカー企業様から頂戴するさまざまなアイディアをクイックに取り込ませていただいています。まさにフルオーダー。
(unerry)イチエダ:
なるほど。dボタンではここまでライブ感は出せませんね。
(eat)玉井さん:
そうですね。dボタンとの違いを問われるのですが、似て非なるものだと思います。
よく参加者の方から感想をいただくのですが、中でも多いのは
「子供とドキドキしながら毎週楽しみにしています」
「LINEグループを親戚で作って参加しています!」
「コミュニケーションが難しい思春期の娘ともこの3分半は一緒にクイズをしています」
といった家族時間を共有する場になっているというお話です。大切な人と一致団結して1問10秒のクイズに夢中になってくれている。「テレビちゃん。」アプリは、そういった参加者の姿をとてもリアルに感じながら、ユーザー目線でサービス設計されています。
(eat)黒河さん:
私としては「テレビちゃん。キャッチ」もおすすめですよ。
ポイントに応じて早押しクイズのヒントがもらえる。いつの間にか真剣になる、ミニゲーム「テレビちゃん。キャッチ」
(eat)玉井さん:
たしかに(笑)。黒河のセンスが一番光っているのは、「テレビちゃん。キャッチ」かもしれません。
(unerry)イチエダ:
僕も好きです、「テレビちゃん。キャッチ」。
こぼれ話:「テレビちゃん」キャラクター誕生秘話
テレビちゃんはニホンカワウソがモチーフのキャラクターです。ニホンカワウソって、愛媛県の県獣に指定されているんですよね。絶滅種に指定されているのですが、最後に目撃されたのが愛媛県という説があるそうです。そんなニホンカワウソにテレビをかぶせてみたという至極シンプルな誕生秘話なのですが、日本全国のご当地の動物がテレビをかぶったキャラクターになってくれたら面白いなと密かに思っております。
(檜垣さん)
新たな収益を生み出すビジネスモデルを全国のローカル局へ
(unerry)イチエダ:
日本列島をスタジアムにするためには、全国の放送局を巻き込んでいく必要がありそうです。面白さは十分すぎる内容だと思うので、ビジネス的に成立しているのであれば、一気に広まる可能性もあると思います。全国展開にむけた作戦はありますか?
(eat)玉井さん:
ビジネスモデルとしては、実際かなりうまくいっているので、実績をしっかりお伝えできればと思います。
現在は、地元メディア × 地元リテール企業 × メーカーの体制で組んでいますが、リテール企業の広告予算ではなく、メーカーの販促費を頂戴する形でなりたっています。つまり、従来のテレビCMモデルにはなかった新しい売上を獲得できています。
また、アプリでクーポンを発行しているので、「テレビちゃん。」効果は来店や購買にどの程度寄与しているのかデータで確認できています。数字上でもきちんと結果をお返しできており、継続してご発注いただいているのも大きな特長ですね。
視聴率についても、今まで獲得が難しかった女性やお子さんの個人視聴率も上がってきているというポジティブな結果が得られています。
(unerry)イチエダ:
なるほど。良いことばかりに聞こえますが、逆に、どんなハードルがあるのでしょうか?
(eat)玉井さん:
放送局の事情、地域の事情などによる再現性の難しさは一つあるかなと思います…。
たとえば手間の軽減。正確には「手間のかかり具合を可視化」することが非常に難しいです。事業成果は自信をもって「儲かります」と言えるところまできましたが、局によって手間のかかり方は大きく変わるので、スパっとお伝えし切れないモヤモヤ感は残っています。
(eat)黒河さん:
まだ検討中のステージですが、より手間をかけずに導入いただけるようなパッケージ開発も考えています。3年以上やってきた中、視聴者とどう繋がったら一番能動的に動いていただけるのかの知見は得られてきましたので「テレビちゃん。」のエッセンスを凝縮したご提案をできればと思っています。
リハーサルの様子を見学させていただきました。放送画面とアプリ画面を切り替えるのは黒河さんの技
(eat)檜垣さん:
放送局は関係者が多いので、局内でも多くの部署・役割の方の共感を得る必要があります。我々もいろんな部署の協力があって実現できているのですが、新しいことにチャレンジする分、仲間づくりには時間がかかるものです。でも、全員を巻き込むことは難しくても、各部署に「テレビちゃん。」を熱愛してくれる方を1人作ることが突破口になるのかと思っています。
(unerry)イチエダ:
unerryは人流データの会社なので、人の動きを解析したり予測したりという事が得意です。しかし、人を動かす原動力は、熱量でしかないと、日々感じています。
再現性の問題はあるかと思いますが、「面白いコンテンツを作りたい」という純粋な熱量はどんな放送局さんにもあると思います。
「テレビちゃん。」はまさにテレビの熱量で人を動かしている面白い仕組み。制作だけでなく、編成から見ても営業から見ても「いいね!」と言ってもらえるはずだと思いますので、全部まとめてファンになってもらえるようなチーム作りのお手伝いを、僕もしていければと思います。
(eat)玉井さん:
日本列島がまるっとイベント会場になったら、本当に楽しいと思います。いろいろと試してきましたので、きっと最短距離で新しいチャレンジをしてもらえるノウハウを共有できるはずです。全国のローカル局さんと一緒に「テレビちゃん。」を日本中に広げていきたいと思います。
みなさま、ありがとうございました!
▼後編に続く!▼
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