大丸有エリアの街行動データをダッシュボードで見える化。データ活用による「街の新たな価値創造」への挑戦
三菱地所株式会社
2020.11.16
KEYWORDS
- #エリア分析
- #スマートシティ
- #不動産DX
1894年に最初のオフィスビルとして三菱一号館が竣工して以来、日本のビジネスの中心地として成長し続けている丸の内。三菱地所株式会社は、丸の内エリアのオープンイノベーションフィールド化を目指して施設整備(ハード)と集積・交流(ソフト)両面で活動しています。
今回は、そうした取り組みの一つである「丸の内データコンソーシアム」において丸の内エリアに設置されたビーコンを活用し、エリア内の流動人口傾向把握を可能にしたダッシュボード構築施策についてご紹介します。また、同社 オープンイノベーション推進室の中でもAIやIoTといった先端技術の実証などをご担当されている奥山 博之様と小松原 綾様にご導入のきっかけや実際の活用についてお伺いしました。
● コロナで大きく変化し続ける人流パターンも、ダッシュボードで可視化
● ビーコンでエリア内のビル間・フロア間移動の移動データも分析可能
● データ解析はスマートな、変化に強い「街づくり」の基盤に
エリア内に約700個のビーコンを設置。ビル間・フロア間の人の流れも見える化
三菱地所は2019年9月、富士通株式会社とともに、「丸の内データコンソーシアム」を設立しました。「丸の内データコンソーシアム」は東京・丸の内エリアにおいて、データ活用を通じて街や社会における新たな価値や新たな事業の創出を目指すプロジェクトであり、unerryも街行動データ解析のために参画しています。丸の内エリアに約 700 個のビーコンを設置し、街の人流データを解析し定期的にレポーティングをしてきました。
提携アプリをインストールした来訪者がビル内に設置されたビーコンのBluetooth電波圏内に入るとリアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank®」に来訪データが蓄積。人の移動を連続的に把握できる仕組みとなっています。これによりGPSだけでは把握が難しい、エリア内のビル間・フロア間の移動まで検知できます。
また、「Beacon Bank®」上の全国のビーコン・GPSデータのAI解析により、丸の内エリアへの来訪者が普段どのような場所への訪問傾向が高いかといった行動パターンや、居住エリアや当日の来訪経路なども把握できます。
本施策においては、「丸の内データコンソーシアム」の取り組みを通して蓄積してきた街行動データを、三菱地所内でタイムリーに把握・分析するためのダッシュボードを構築いたしました。
丸の内データコンソーシアム 体制図
※本施策においては名前や電話番号など、個人を特定できる情報は一切取得・使用しておりません。また、取得した行動情報は、個人を特定できない状態で統計情報化しています。
INTERVIEW
企画検討のための基盤として導入 部署横断でデータ共有
三菱地所株式会社 エリアマネジメント企画部 オープンイノベーション推進室 奥山 博之様、小松原 綾様
- ――ダッシュボード導入に至ったきっかけを教えてください。
-
2020年の年明けより世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大。オフィス街である丸の内エリアおよび大手町有楽町エリア(以下「大丸有エリア」)においても、そこで働く人々の行動パターンは大きく変化しました。 街の人流データは企画検討のベースとして非常に重要なものですが、通勤パターンが多様化したことで、これまでと同様の把握や予測は難しい状況となりました。 また、エリア内の流動人口のボリュームに応じた企画を展開できるよう、継続的にデータを取得・可視化しておくことが必要と判断し、今回の導入を決定いたしました。
- ――ダッシュボードではどんな内容を確認できますか? また、どのように活用していますか?
-
ダッシュボードでは、エリア全体/ビル単位/特定フロアにおける流動人口の傾向を日次や週次で見られるほか、訪問者の推定属性分析、及びビル間の回遊状況等を確認することができます。 当初は部署内での共有が主でしたが、現在は社内に幅広く情報共有を行い、取引先との商談の場面で基礎データとして活用されています。
また月に1度はダッシュボード画面から「大丸有エリア全体の人流推移」や「ビル単位の人流推移」など特に社内でも関心の高い項目をピックアップし、部署横断のコミュニケーションツールでレポートを共有しています。別途社内で行われていたテナント様への独自ヒアリングともデータの整合性があったことから、レポートは「信頼できるもの」と評価されています。
ビル間の回遊状況(ダッシュボードより一部抜粋・加工)
- ――ダッシュボードの導入で工夫したことはありますか?
-
導入後、多くの場面で役に立つものになるよう、柔軟に意見を取り入れることを大切にしました。当初はビル単位やビル間の人流を確認する予定でしたが、社内で「商業ゾーンへの流動人口傾向」の分析を希望する意見があったため、データを追加作成する、といったような事もありました。グラフ作成にあたっては、どういった軸や観点でロジックを組むかについてunerryのご担当とじっくり相談できたので、安心して進めることができました。
- ――今後はどのようにデータを活用していきたいと思いますか?
-
エリア全体に設置しているビーコンを活用することで、大きな変化のタイミングにおいても人の動きを定量的に把握できることがわかりました。データを基に、世の中の変化に対して適切な対応を、スピーディーに行っていければと思います。 そして、コロナ禍によるお客様のニーズや価値観の変化をより深く理解するためのデータとして活用し、イベントやキャンペーンの企画立案、テナント様の誘致など幅広い場面で使っていきたいです。 また、将来的には、店舗様自身がデータを使い、販促のためのプッシュ通知など、個別のマーケティング施策を行えるような仕組み作りを検討していきたいです。
- ――unerryへの期待や一緒に取り組んでいきたいことなどはありますか?
-
大丸有エリアといっても、大手町・丸の内・有楽町のそれぞれで行動パターンや来訪者の趣味嗜好は異なってくると思いますので、よりメッシュの細かいエリアごと、それぞれの価値観に合わせたサービスのご提供を考えていくのが次のステップかと考えています。 リアル行動データの活用は、まだ目立った成功事例は少ない状況かと思います。世の中に先駆けた事例として、センシングデータや他のデータも掛け合わせながら、今後も街づくりにおける新しい成功事例を一緒に作り上げていきたいです。
三菱地所株式会社 エリアマネジメント企画部 オープンイノベーション推進室 小松原 綾様と奥山 博之様
[取材日] 2020年8月19日 ※内容は取材当時のものです。
▼ 本事例に関連するサービス ▼
▼ 関連するサービスの資料はこちら ▼